令和5年度 日本語教育能力検定試験の試験問題における
試験Ⅲ 問題8
の解説です。
お手元に、問題冊子をご用意の上でご確認ください。
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問1 テーマに関する資料や文献
その答えになる理由
選択肢を1つずつ見ていきましょう。
事前に先行研究を確認しておかないと、そのテーマにおいて
- どのような主張がなされていて
- どこまでが明らかになっているか?
がわからないですね。
「やり切ってみたら、既に先駆者が説明した内容だった」ということにもなりかねません。
先行研究を主張の根拠にすることもできるので、1が正解です。
統計的に有効な結果を導き出すためには、母集団が10,000人であれば、サンプルを1,000集めないと誤差±3%以内に収まりません。
サンプルが100人だと±10%の誤差が現れます。
母数が十分でない量的データは、参考にする分には構いませんが、一般化することはできません。
2は間違いです。
インターネット上の情報は即時性に優れているため、書籍化される前のものや元データを探すのに適しています。
重要なのは「正確であるか?」なので、更新されることは問題ではありません。
3は間違いです。
資料の種類や内容に一貫性を保つことは大切ですが、探し方を絞る必要はありません。
インターネット上で閲覧できる論文もあれば、国会図書館から取り寄せなければならないものもありますね。
4は間違いです。
問2 リサーチ・クエスチョン
解説 リサーチ・クエスチョン
○ なぜ日本語教育能力検定試験の学習に過去問を使うのか?
△ 日本語教育能力検定試験の学習方法
論文やレポートのタイトルそのものではなく、調査・研究を進めていくにあたっての第一歩となる問いのことを指しています。
その答えになる理由
選択肢を1つずつ見ていきましょう。
「リサーチ・クエスチョン」は研究の方向性を決めていくためのものです。
問いを作った時点で方向性が決まってしまっていると、複数の選択肢を検討することができません。
前提を含まない問いにした方が良いので、1は教師からのアドバイスとして適当です。
○ 日本語教育能力検定試験の学習で過去問は使うべきか?
○ なぜ日本語教育能力検定試験の学習に過去問を使うのか?
のどちらでも「リサーチ・クエスチョン」としては問題ありません。
大切なのは、複数の選択肢を検討できること・前提ありきの問いになっていないことですね。
2は教師からのアドバイスとして不適当です。
「政治参加」がどのレベルかを定義しないと、問いに対する答えが変わりますね。
選挙に行くだけで良いのか・パブリックコメントを提出するのかなど、人によって基準が異なります。
3は教師からのアドバイスとして適当です。
「若者」が誰を指すのかを定義しないと、調査範囲が決まらないですね。
4は教師からのアドバイスとして適当です。
2が正解です。
問3 アウトラインの検討をピア・レスポンスで行う際の指導上の留意点
解説 アウトライン
令和3年度試験の記述問題であれば、
① 問題文の前提は何か?
・上級文法クラス
・動画を用いた反転授業を初めて取り入れる
② 問題文で条件になっていることは何か?
・知識伝達の段階でどのような「動画」を用意するか?
・動画を踏まえて、60分の授業時間内でどのような「活動」を行うか?
・その活動が上級文法クラスにおいて効果的だと考えられる「理由」は何か?
を書き出し、②の問いに対する答えを記載したものがアウトラインになります。
解説 ピア・レスポンス
その答えになる理由
レポートの概要ができた段階で、他の学習者とチェックし合う活動ですね。
選択肢を1つずつ見ていきましょう。
アウトライン段階ではまだ概要なので、書き手側からの補足説明が必要な場合があります。
1は間違いです。
アウトライン段階ではまだ概要なので、足りている点・足りない点が混在しています。
限られた時間の中で他の学習者から助言をもらうので、ポイントを絞るのは有効ですね。
2が正解です。
他の学習者からの助言は、「なんだか違和感がある…」のような抽象的なものよりも具体的なものの方が書き手が修正しやすいですね。
3は間違いです。
ピア・レスポンスの醍醐味は、一般的な見解だけでなく、他の学習者独自の視点からの助言がもらえることですね。
4は間違いです。
問4 文献を引用する際の留意点
その答えになる理由
選択肢を1つずつ見ていきましょう。
明らかな誤字・脱字がある場合でも、引用時はそのまま掲載します。
その際、読み手側への配慮として(ママ)(原文ママ)と記載するのが一般的です。
1が正解です。
論文・レポート作成時に大変なのは、
- 文献の引用元を調べる
- 引用元の引用元を調べる
のように、どんどん遡っていかなれけばならないところです。
「参考文献として書いてあるのに、全然参考にしていないじゃん…」ということはよくあるので、元の資料をしっかりと調べることが大切ですね。
2は間違いです。
元資料の内容をそのまま記載するのが「直接引用」・要約して記載するのが「間接引用」です。
直接引用だと繰り返しの述べている内容をそのまま掲載しますが、間接引用であれば内容をまとめても問題ありません。
3は間違いです。
直接引用・間接引用に関係なく、解釈や主張を述べるために元資料から引用しているはずですね。
4は間違いです。
問5 レポートのタイトル
その答えになる理由
選択肢を1つずつ見ていきましょう。
△ オリジナルシャンピニオンソースの牛フィレ肉のステーキ
○ 牛フィレ肉のステーキ ~オリジナルシャンピニオンソースで~
MOCO’Sキッチンから拝借しました。
タイトルが長くなる場合は、「主題 ~副題~」のように分けた方が良いですね。
1は適当な内容です。
この本のタイトルが「音声学者が考える子どもの言語発達」だったら…本文の内容がイメージしづらいですよね。
タイトルは分かりやすいものにした方が良いので、2は適当な内容です。
音そのものが特定のイメージを喚起する「音象徴」は、オノマトペで言及されることが多い内容です。
この本のタイトルからは、物やキャラクターの名称についての音象徴に言及した独自性が見れらますね。
タイトルで差別化を図るのは有効なので、3は適当な内容です。
この本のタイトルが「非円唇広母音と非円唇前舌狭母音の口腔内の関係」だったら…初学者にはハードルが高そうですよね。
多様な読み手の関心を引くには専門用語を減らした方が良いので、4は不適当な内容です。
4が正解です。
川原繁人先生の著書の中で、私のお気に入り3冊を例としてご紹介しました。
日本語教育能力検定試験の学習の中で「音声が苦手…」となった方は、調音音声学の基礎部分が合わなかっただけだと思います。
上記はどれも入り込みやすい内容なので、ぜひ読んでみてください。