令和2年度 日本語教育能力検定試験の試験問題における
試験Ⅰ 問題3C
の解説です。
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前の問題はこちら
(11)対人的モダリティ
解説 命題とモダリティ
おそらく彼が犯人だと思う。
「命題」とは、その文が伝える事柄的な内容を担うもののことです。
上の例文であれば、「彼が犯人だ」の部分が該当します。
「モダリティ」とは、その文の内容に対する話し手の判断・聞き手に対する伝え方といった文の述べ方を担うもののことです。
上の例文であれば、「おそらく」「と思う」の部分が該当します。
彼が犯人だ。
のように、命題だけの文だと単に内容を述べているだけですが、
おそらく彼が犯人だと思う。
のように、モダリティの表現があることで、「話し手は、○○だと思っている」ということがわかりますね。
日本語は、命題・モダリティの違いが文構造に強く反映されるため、命題の要素が文の内側に・モダリティの要素が文の外側に現れる傾向にあります。
また、モダリティは大きく
私は彼が犯人だと思う。
のように話し手が命題をどう捉えているかを表す「対事的モダリティ」と、
明日一緒に行こうよ。
のように命題について聞き手に同意や確認を求める「対人的モダリティ」に分けることができます。
モダリティについては、以下の記事で詳しく解説しています。
こちらもあわせてご確認ください。
解説 引用節
先生から、過去問を重点的に取り組むように言われた。
私は、文法の中でも「形態論」が1番面白いと思っている。
引用節で述語にくるのは、
- 言う
- 伝える
- 感じる
- 思う
- 指示する
などです。
また、引用節の部分は、
先生から、「過去問を重点的に取り組む」ように言われた。
私は、「文法の中でも『形態論』が1番面白い」と思っている。
のように「 」で示されることがあります。
引用節を含む補足節の種類は、以下の記事で詳しく解説しています。
こちらもあわせてご確認ください。
その答えになる理由
選択肢を1つずつ見ていきましょう。
1の引用節は、
もっとまじめにやれ
です。
聞き手に「もっとまじめにやる」という行為を求めているので、対人的モダリティに該当します。
これが正解です。
2の引用節は、
田中さんの病気はすぐによくなる
です。
引用節の外にある「見ています」が対事的モダリティですが、引用節の中にはモダリティが含まれていません。
2は、間違いです。
3の引用節は、
彼女ならもう来るんじゃないか
です。
「ないか」がモダリティですが、対人的モダリティではなく、対事的モダリティに該当します。
3は、間違いです。
4は、そもそも引用節がないですね。
「 」をつけるのであれば、「生き字引」ですが、述語がないので節ではありません。
(12) 「引用」の例に当てはまらないもの
その答えになる理由
選択肢を1つずつ見ていきましょう。
1には、
店番をして
という引用節が含まれています。
これは、「引用」の例として適当です。
2には、
怪しい
という引用節が含まれています。
これは、「引用」の例として適当です。
3には、
もう行かない
という引用節が含まれています。
これは、「引用」の例として適当です。
4には……引用節がないですね。
「 」をつけるとすれば
大人料金の半額
ですが、述語が含まれていないので、節ではありません。
4は、「引用」の例として不適当です。
これだけ「~となる」を使って決まっていることを表す文型ですね。
(13) 名詞修飾節と被修飾名詞の間に用いられる助詞
その答えになる理由
下処理を終えた食材がこちら。
であれば、被修飾名詞が「食材」・名詞修飾節が「下処理を終えた」です。
この場合は、間に用いられる助詞がないですね。
名詞型引用表現の場合はどうなるかを例文を使って見ていきましょう。
○ 彼が犯人とのうわさを聞いた。
被修飾名詞が「うわさ」・名詞修飾節が「彼が犯人」です。
間に「との」を介して文が成立しています。
1は、適当な内容です。
○ 彼が犯人ってうわさを聞いた。
被修飾名詞が「うわさ」・名詞修飾節が「彼が犯人」です。
間に「って」を介して文が成立しています。
2は、適当な内容です。
× 彼が犯人としてうわさを聞いた。
被修飾名詞が「うわさ」・名詞修飾節が「彼が犯人」です。
間に「として」を介して文が成立しないですね。
3は、不適当な内容です。
○ 彼が犯人といううわさを聞いた。
被修飾名詞が「うわさ」・名詞修飾節が「彼が犯人」です。
間に「という」を介して文が成立しています。
2は、適当な内容です。
(14)
その答えになる理由
選択肢を1つずつ見ていきましょう。
○ 先生に母が遅れると伝えてください。
「伝える」などの伝達を表す動詞の場合、引用節内にガ格をとることが可能ですね。
1は、不適当です。
○ 7時までに仕事を終わらせろと頼んだ。
○ 7時までに仕事を終わらせなさいと頼んだ。
○ 7時までに仕事を終わらせてくださいと頼んだ。
「頼む」などの依頼を表す動詞の場合、引用節内に「~しろ」以外の「~なさい」「~てください」なども用いることができます。
2は、適当な内容です。
○ 7時までに終わらせてねと言った。
○ 7時までに終わらせてよと言った。
「言う」などの発話を表す動詞の場合、引用節内に「ね」「よ」などの終助詞を使うことができます。
3は、適当な内容です。
○ 彼が犯人だと思う。
× 彼が犯人ですと思う。
「思う」などの思考を表す動詞の場合、引用節内ではデス・マス体を使うことはできません。
4は、適当な内容です。
(15)引用の「ように」に関する記述
その答えになる理由
選択肢を1つずつ見ていきましょう。
「言う」などの発話を表す動詞の場合、
下校時刻になったらすぐに帰るように言った。
のように、「ように」の引用節内で過去形を使うことができます。
1は、不適当です。
「頼む」などの依頼を表す動詞の場合、
先生に出席していただけるように頼んだ。
のように、「ように」の引用節内で丁寧体を使うことができます。
2は、不適当な内容です。
「命令する」などの命令を表す「ように」は、
すぐにここに来いと命令した。
↓
すぐにここに来い
のように、主節を省略することが可能ですね。
3は、不適当な内容です。
「思う」などの思考を表す動詞の場合、
○ 彼が犯人であるように思った。
× 彼が犯人であるよう思った。
のように、「に」を省略することができません。
4は、適当な内容です。