平成28年度 日本語教育能力検定試験の試験問題における
試験Ⅲ 問題10
の解説です。
お手元に、問題冊子をご用意の上でご確認ください。
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問1 ミステイク エラー
用語の意味がわかっていれば、楽勝です。
解説 エラー
「エラー」とは、母語の干渉や言語能力不足が原因となって起こる誤用のことです。
言い間違いなどの言語運用の誤用である「ミステイク」とは違い、間違って覚えているため、修正されないとそのまま定着してしまうことがあります。
解説 ミステイク
「ミステイク」とは、ついつい間違えてしまったというタイプの誤用のことです。
言語能力不足が原因となって起こる「エラー」とは違い、すぐに訂正できます。
その答えになる理由
選択肢を1つずつ見ていきましょう。
1は、前半が「エラー」の内容・後半が「ミステイク」の内容です。
「エラー」は母語の影響などによって起こる誤用・「ミステイク」は学習が進んでいく中で誰しもが通る「うっかりミス」の誤用が該当します。
2は、前半が「グローバル・エラー」の内容・後半が「ローカル・エラー」の内容です。
前者は訂正しないと意味が通じないレベルの誤用・後者は訂正しなくても意味上は問題ないレベルの誤用です。
3は、前半が「エラー」の内容・後半が「ミステイク」の内容です。
「エラー」は母語の干渉や言語能力不足が原因で起こる誤用なので、母語話者では発生しません。
「ミステイク」は「うっかりミス」なので、母語話者でも起こりえます。
4は、「ミステイク」「エラー」ともに用語と内容が合致しています。
これが正解です。
問2 過剰般化
解説 過剰般化
「過剰般化(過剰一般化)」とは、学習言語のルールを当てはまらないものにまで適用させてしまう誤用のことです。
ナ形容詞の否定形「~じゃないです」をイ形容詞に当てはめて、「美しいじゃないです」と言ってしまうことなどが例に挙げられます。
その答えになる理由
選択肢を1つずつ見ていきましょう。
1は、「~たい」の接続の誤りです。
「動詞のマス形+たい」の形が正解ですね。
過剰般化の例ではありません。
2は、「また」と「まだ」の混同なので「声帯振動の有無」の誤りです。
過剰般化の例ではありません。
3は、イ形容詞「面白い」にナ形容詞のルールを適用させています。
過剰般化の例なので、これが正解です。
4は、「~ていた」のアスペクトの誤りです。
過剰般化の例ではありません。
問3 完成法
解説 完成法
「筆記で空所を補充するような文完成問題」とは、以下のような問題形式のことです。
次の文を完成させなさい。
( )ので、病院に行きました。
客観テストの1つで、「完成法」と言います。
( )の自由度が高くなるほど主観テストに近づくため、採点基準を明確化したり、どのような解答が求められているかを学習者がわかるようにしたりしておくことが大切です。
その答えになる理由
選択肢を1つずつ見ていきましょう。
選択肢が○×だと、勘で答えても正答率は50%ですね。
1は「完成法」ではなく「真偽法」の内容です。
未完成の文を完成させることで、正しい形式を産出できる能力があるかを測定することができます。
2が「完成法」の内容です。
3は、前半・後半の内容が合致していないですね。
高度な理解力や思考力を測定する問題になればなるほど、採点基準の設定が難しくなります。
簡単に問題作成・採点ができるのは、○×の「真偽法」のものや、単純再生法と呼ばれる以下のような形式の「単純再生法」のものです。
4は「完成法」の内容ではありません。
次の文の( )にひらがなを1つ入れなさい。
1) 明日、私は山田さん( )買い物に行きます。
テスト形式については、以下に練習問題を掲載しています。
ぜひ、チャレンジしてみてください。
問4 「電気がついてです」の誤用の説明
その答えになる理由
自動詞「つく」は正しく使えていますが、アスペクトの「ている」が使えていないですね。
この場合の「ている」は「電気がつく」という結果の状態を表しています。
2が正解です。
問5 中間言語分析
解説 中間言語
「中間言語」とは、セリンカーによって唱えられた第二言語学習者独自の発展途上にある言語体系のことです。
目標言語に近づいていく過程における、学習者のその時点での正用・誤用両方の言語能力を指しています。
その答えになる理由
選択肢を1つずつ見ていきましょう。
「中間言語分析」では、目標と現状のズレではなく、現状そのものを対象としています。
1は間違いです。
「中間言語分析」をする中で母語の影響を見つけることはありますが、「中間言語分析」の目的が母語の影響を見つけることなのではありません。
2は間違いです。
3は「中間言語分析」の内容そのままですね。
これが正解です。
「中間言語分析」をする中で誤用の定着を見つけることはありますが、「中間言語分析」の目的が誤用の定着防止なのではありません。
4は間違いです。