これまで、過去問解説サイトの運営者として多くの受験者の方に関わってきました。
自身の経験も踏まえた具体的な学習法・学習時間について、解説していきます。
日本語教育能力検定試験の合格は、どれくらい難しいのか?
日本語教育能力検定試験の合格率は、30%程度
グラフを見ると、2012(平成24)年度試験あたりを境に、ゆるやかに合格率が上昇していることがわかります。
ただし、この数値の見方には注意が必要です。
純粋な独学での合格率は、30%程度ではない
日本語教育能力検定試験には受験資格がないため、
- 過去に合格している人が何回も受験している
- すでに日本語教師として活躍している人も受験している
ことがあります。
これらの人たちは、当然「ゼロベースで勉強を始めて、今回が初受験!」の受験者よりも合格点までのハードルが低いはずです。
また、独学・養成課程受講中などの学習スタイルによっても、合格までのハードルは違います。
学習スタイル別の統計は公表されていませんが、養成課程受講者の合格率は6~7割程度であることが多いようです。
養成課程受講者が一定数いることを考えると、独学での合格率は30%程度よりも低いことが想定されます。
※3 2022年度/全国合格率30.8%(受験者7,076名中合格者2,182名)に対し、ヒューマンアカデミー合格率70・6%(合否調査アンケートに回答した数 201名中合格者142名)
ヒューマンアカデミー株式会社 HP
ぶっちゃけ、独学でも合格できるの…?
私自身独学で日本語教育能力検定試験に合格していますし、サイト運営する中で多くの独学合格者のサポートも行っています。
実例があるので、独学合格は可能です。
ただし、内訳からわかる通り、受験者全員がスタートから同じ力量ではなく、またスタートライン自体も同じではありません。
独学で挑むのであれば、後述していく内容のような学習方法の工夫と難関に挑む大いなる覚悟が必要になってきます。
注意するのは、
- 独学であれば、かかるお金を削減できる
は概ね正しいのですが、
- 独学であれば、かかる時間を削減できる
は正しくない場合が多いことです。
試験範囲すべてを養成課程で学ぶよりもギュッと凝縮できれば別ですが、そんなことができるレベルであれば、そもそも対策をしなくても合格できるはず…!!
戦略的に「選択と集中」を進めていかなければ、より時間がかかってしまう可能性が高いことを意識していくのが大切です。
日本語教育能力検定試験に合格するための3つのステップ
① 目指すゴールを決める
日本語教育能力検定試験は、満点が240点で
- マーク式問題:1点×220問
- 記述式問題:20点×1問
です。
合否通知発送のタイミングで公式解答が発表されるため、選んだ答えを控えておけば自己採点できるのですが、記述式問題の得点がどれくらいだったかはわかりません。
(不合格の場合は得点が通知されるので、マーク式部分の自己採点の結果と合わせて把握することができます。)
正確な合格ラインは公表されていないのですが、例年7~8割の得点率が目安だと言われています。
記述式問題の得点はコントロールしにくいので、記述式20点分が半分の10点だったとしても、トータルの得点率8割となる点数を目指してみましょう。
具体的には、マーク式だけで「182点(得点率82.7%)」です。
もちろん満点の240点や、182点よりも高い点数でも構いません。
② 現状とゴールまでのギャップを把握する
ここでの現状把握は、
- なんだか、知らない用語が多いなぁ…
- 意外と文法が難しいぞ…!!
- 音声で聞きとるポイントがわからない…
という内容ではなく、具体的な得点です。
時間内に収まらなくても良いので、記述式まで含めて1年分解いて得点を出してみましょう。
記述式は採点できないので、文字数をクリアできていれば半分の10点・書き切れていなければ0点で計算します。
①で設定したゴールとここで取れた点数の差分が、学習で埋めなければならないギャップです。
チャレンジする過去問は、その時点での最新年度のものを使いましょう。
執筆時点で出版されているものの最新は、2023(令和5)年度試験です。
③ 確保できる学習時間を確認する
多くの場合、想定した時間をMAXで使えるわけではありません。
「こんなはずではなかった!」をなくすためにも、あらかじめ「×70%」で少なく見積もっておきましょう。
- 平日にかけられる学習時間
→ 1.5時間 × 5日分 = 7.5時間 - 休日にかけられる学習時間
→ 3時間 × 2日分 = 6時間 - 学習スタートできる日から試験1週間前までの週数
→ 6月スタートの22週
だとすると、
(7.5時間 + 6時間)× 22週 × 70% ≒ 208時間
が実際に確保できるであろう学習時間です。
日本語教育能力検定試験に合格するための学習時間
見積もった学習時間で合格できるのか?
「あれ…?先ほど見積もった時間だと、全然足りない…?」となった方も、大丈夫です。
この420時間は、養成課程で日本語教師を目指す場合の最低受講時間です。
- 日本語教育能力検定試験の出題範囲
- 養成課程のカリキュラム
は、どちらも文化庁による「必須の50項目」がベースになっています。
「必須の50項目」とは?
「必須の50項目」とは、2019年(平成31年)3月4日に文化審議会国語分科会が提出した「日本語教育人材の養成・研修の在り方について(報告)改訂版」に記載されている「日本語教師【養成】における教育内容」の項目のことです。
上記リンクのP43に一覧があるので、1度確認してみてください。
過去の教育内容との差異を見るのであれば、令和5年2月に文化庁が提出した「日本語教育の適正かつ確実な実施を図るための日本語教育機関の認定等に関する法律案(仮称)の検討状況について」のP19の方がわかりやすいかもしれません。
ゼロから合格を目指すのであれば、ゼロから養成講座を受講するのに必要な420時間を見積もる必要がありますが、現状の実力は0点ではないはずです。
現状把握をしていなければ必要時間を420時間で見積らなければなりませんが、ゴールとのギャップが少なければ少ないほど、かける時間も短縮することができます。
学習時間は、ツール選択でさらに短縮できる
参考書・問題集を使用する目的は、
- 用語の意味を確認する
- その用語がどのように出題されるかを確認する
- 知識の定着を確認する
など、さまざまです。
これらの目的を複数クリアできる参考書・問題集を使用することにより、かかる時間を短縮することができます。
実際の出題傾向から離れた一問一答よりも、
- 用語の意味
- 用語の出題のされ方
を選択詞1つ1つから確認できる過去問・もしくは過去問に近い出題形式のものをメインで使うようにしましょう。
おすすめの参考書・問題集は、以下の記事で詳しく解説しています。
こちらも合わせてご確認ください。
具体的な学習法・学習手順
まず、1年分過去問を解いて現状とゴールのギャップを把握する
次に、学習の戦略を立てる
戦略とは、ゴールまでのギャップを埋めるための方向性のことです。
- 「●●を使って学習する」といった「手段」
- 「●月に●●を勉強する」といった「スケジュール」
のことではありません。
仮に、目標とする得点が240点中の192点(得点率8割)・現状の得点が120点(得点率5割)だとすると、
- どの試験区分のどの分野で、ギャップとなる72点を埋めるか?
が「戦略」に当たります。
ギャップを算出するためのスタートラインは人それぞれであり、かけられるリソース(時間・体力・周囲の協力)も違うはずです。
「戦略」も人によって様々なので、個人ごとに設定する必要があります。
学習をスタートする前に、しっかりと言語化するようにしましょう。
最初に購入する参考書・問題集
過去問は、最新年度から揃えていきましょう。
出題傾向の違いから、10年分までは必要ありません。
また、2015(平成27)年度試験が欠品していて、中古価格も高騰しています。
そのため、2016(平成28)年度試験までを揃えられると良いですね。
解いていくときは、出題傾向が近い新しい年度から順に取り組むのが鉄則です。
総合的な参考書は、執筆時点で1冊しか選択肢がありません。
「赤本」と呼ばれるもので、大半の受験者の方は持っているはずです。
ただし、「必須の50項目」に応じた現状の出題範囲には対応していないので、全体観を掴むために絞って使用しましょう。
学習優先度の高い分野から埋めていく
理由は、シンプルに出題数が多く、得点を伸ばしやすいからです。
マーク式は「言語」の問題が1番多く、記述式はおもに「言語」「言語と教育」から出題されています。
どの分野も満遍なくギャップがある場合は、この2分野を優先させましょう。
点数の伸び幅が大きいので、モチベーションにもつながりやすくなります。
特に「言語」は、出題範囲が広く、専門用語も多く存在します。
全体観を掴むと個々の分野も理解しやすくなるため、言語学については
文法については
のどちらかに、学習初期段階で触れておくのがおすすめです。
過去問で学習を進めていく
- 一次情報は、実際に出題された過去問
- 二次情報は、過去問を分析して作られた参考書・問題集
- 三次情報は、参考書・問題集を加工したYouTubeなど
です。
初学者の段階で「何が本当に大切な情報か?」を判断するのは、本当に難しいです。
中には、本質的な部分には触れないことでわかりやすさを演出する場合もあり、闇の深さが際立っています。
1番簡単な対策は、最初からそういった情報に触れないことです。
- 最重要なのは、一次情報である「過去問」
- 過去問をより効率的に使っていくために、二次情報である「参考書・問題集」を活用していく
ことで、必要な用語を・必要な文脈で触れていくことができます。
ただし、YouTubeなどにも参考書や問題集を水で薄めたものではなく、一次情報がベースになっていたり、理解しやすいように再構成されていたりするものがあるのも事実です。
「このチャンネルであれば…!!」のYouTubeチャンネルについては、以下の記事で解説しています。
ぜひ、参考にしてみてください。
出題範囲を網羅した学習をするためには、アルク社のテキストがおすすめ
過去問の約1,500円・参考書の約3,000円と比べると金額が高く見えてしまいますが、かなりコストパフォーマンスが良い内容です。
以下の記事に、実際にテキストを確認したレビューを掲載しています。
こちらも合わせてご確認ください。
最後に
この記事では、
- 日本語教育能力検定試験の合格の難易度
- 日本語教育能力検定試験に合格するための3つのステップ
- 日本語教育能力検定試験に合格するための学習時間
- 日本語教育能力検定試験に合格するための学習法・学習手順
について、解説してきました。
これ以外にも、日本語教育能力検定試験の記事を多数掲載しています。
ぜひ、あわせてご確認ください。
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【2024(令和6)年度も実施】日本語教育能力検定試験とは?合格するための最新情報を解説!