【年度横断 日本語教育能力検定試験 過去問】試験Ⅰ 問題1の解説!

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過去問解説

平成26年度~令和3年度 日本語教育能力検定試験の試験問題における

 試験Ⅰ 問題1 (1)

を年度横断で解説していきます。

お手元に、過去問をご用意の上で読んでいただければ幸いです。

※ 過去問は、大きな書店でも置いていないことがあるので、ネットでの購入をおススメします!

日本語教育能力検定試験 試験Ⅰ 問題1 (1)音声記号問題の概要

日本語教育能力検定試験のトップバッターの問題は、例年「音声記号」です。
これは、私が過去問を持っている「平成26年度試験」から「令和3年度試験」まで変更ありません。

試験Ⅰ 問題1は、【 】に示した観点から見て他と性質の異なるものを選ぶ問題です。

音声記号の知識は、試験Ⅱ 問題3 の8点分にも活きてきます。
しっかりと得意分野にしていきましょう。

各年度で聞かれた内容は何か?

各年度において【 】内に示された用語は以下の通りです。

令和3年度(2021年度)試験口蓋音子音
令和2年度(2020年度)試験調音点子音
令和元年度(2019年度)試験円唇性母音
平成30年度(2018年度)試験二重調音子音
平成29年度(2017年度)試験音声的対立子音
平成28年度(2016年度)試験調音法子音
平成27年度(2015年度)試験唇の丸め母音
平成26年度(2014年度)試験調音点子音

令和3年度(2021年度)試験は「口蓋音」となっていますが、「口蓋」とは「硬口蓋」「軟口蓋」のことなので、令和2年度(2020年度)試験や平成26年度(2014年度)試験と同じ傾向です。

また「調音点」「調音法」などの子音に関する内容だけでなく、この8年間のうち2回分は母音が絡む問題が出題されています。
子音の表を覚えているだけ…では解けない問題も出てくるので、母音もしっかりと対策をしておきましょう。

特に、平成30年度試験(2018年度)試験は面食らってしまった受験生の方が多かったのではないかと思います。

実際に問題の答え合わせをしながら、各年度の傾向に触れていきましょう。

ここから先は、過去問の解答に触れています。
まだ解いていない方は先に問題にチャレンジしてから、ご確認ください。

令和3年度(2021年度)試験

【口蓋音】の観点から見て、他と性質が異なるものはどれか?

「口蓋」とは、口腔内(口の中)の「硬口蓋」「軟口蓋」の部分のことです。
そのため「口蓋音」とは、調音点が「硬口蓋」または「軟口蓋」の音のことです。

音声記号の問題では、最低限「日本語の音にあるもの」がわからないと答えには辿りつけません。
試験Ⅱの勉強と合わせて、自信を持って答えられるレベルまで知識を定着させていきましょう。

まず、日本語の音にあるものから確認していくと

2 [ç] 無声硬口蓋摩擦音
日本語のヒ・ヒャ・ヒュ・ヒョ

4 [ɲ] 有声(歯茎)硬口蓋鼻音
日本語のニ・ニャ・ニュ・ニョ

5 [j] 有声硬口蓋接近音(半母音)
日本語のヤ・ユ・ヨ

となり、すべて「調音点が硬口蓋(=口蓋音)」ですね。
この時点で 1 と 3 の2択まで絞れます。

ここからはテクニックです。

邪道な解き方ですが、音声記号の形が似ているものは調音点が近いことが多いです。
今回の選択肢であれば、3 の [c] は…
 [ɕ] 無声歯茎硬口蓋摩擦音
 [ç] 無声硬口蓋摩擦音
 [c] ??????
のように知っている音声記号と並べてみると「調音点は硬口蓋っぽいかも…」と推測することができます。

3 [c] 無声硬口蓋破裂音
となるため、残った1が正解です。

ちなみに、1 の [ʃ] は
1 [ʃ] 無声後部歯茎摩擦音
です。
※ 平成30年度(2018年度)試験の誤答の選択肢の1つです。

調音点で見ると、
[s] 無声歯茎摩擦音
[ʃ] 無声後部歯茎摩擦音
[ɕ] 無声歯茎硬口蓋摩擦音
に位置するので、「シ」と「ヒ」の間の音をイメージしてみてください。

「その年度の誤答の選択肢が、別の年度の正答…」というのはよくあるので、出てきたものについてはこのタイミングで覚えてしまいましょう。

令和2年度(2020年度)試験

【調音点】の観点から見て、他と性質が異なるものはどれか?

この年度は「日本語の音にないもの」が 1 の [θ] だけなので、楽勝ですね。
※ ちなみに [θ] は、平成28年度(2016年度)試験の誤答の1つです。

2 [m] 有声両唇鼻音
3 [b] 有声両唇破裂音
4 [ɸ] 無声両唇摩擦音
5 [p] 無声両唇破裂音

日本語の音にあるものは、すべて調音点が「両唇」でした。
残った 1 が正解です。

1 [θ] 無声摩擦音
日本語の子音にはない音で、think [θɪŋk] などが該当します。

令和元年度(2019年度)試験

【円唇性】の観点から見て、他と性質が異なるものはどれか?

「円唇性」とは「唇の丸め」のことなので、平成27年度(2015年度)試験と同じ出題のされ方をしています。

「唇の丸め」と言えば、「オ」の音ですね。
日本語の母音で唇を丸めて発音するのは [o] だけです。
ありがたいことに、選択肢も「ア」「イ」「ウ」「エ」「オ」の順で並んでいます。

5 [o] 円唇後舌中母音
のため、5 が正解です。

念のため、他の選択肢と合わせて見ておきましょう。

1 [a] 非円唇低母音(広母音)
2 [i] 非円唇前舌高母音(狭母音)
3 [ɯ] 非円唇後舌高母音(狭母音)
4 [e] 非円唇前舌中母音
5 [o] 円唇後舌中母音

子音が
 ① 声帯振動の有無(有声or無声)
 ② 調音点
 ③ 調音法
の3点で音が決まっていたように、母音は
 ① 舌の前後位置
 ② 舌の高さ
 ③ 唇の丸め
の3点で音が決まります。

これらは、試験Ⅱ 問題3 4番~8番(口腔断面図問題のあとの問題)の選択肢として出てくるので、しっかりと覚えておきましょう。

平成30年度(2018年度)試験

【二重調音】の観点から見て、他と性質が異なるものはどれか?

「二重調音」とは、2つの調音点で同時に調音(呼気の妨害)がなされることを言います。

赤本にもチラッとでてきていますが、今回出てきた「両唇軟口蓋接近音(半母音)」だけ覚えておけば十分です。

書籍によっては「軟口蓋接近音(半母音)」と出てくることもあるので、ご注意ください。
日本語の「ワ」に該当する [ɰ] を [w] とみなして表記することが多いためです。
 [w] 有声両唇軟口蓋接近音(半母音)
 [ɰ] 有声軟口蓋接近音(半母音)

先に、日本語の音にあるものから確認していきましょう。

1 [ɸ] 無声両唇摩擦音
日本語のフ・ファ・フェ・フォ

4 [w] 有声両唇軟口蓋接近音(半母音)
日本語のワ

5 [ç] 無声硬口蓋摩擦音
日本語のヒ・ヒャ・ヒュ・ヒョ

この時点で、調音点が「両唇」「軟口蓋」の2つある 4 が正解だとわかります。

念のため、他の選択肢も見ておきましょう。

3の [ʃ] は、
3 [ʃ] 無声後部歯茎摩擦音
です。
今回は誤答の選択肢の1つですが、令和3年度試験では正答の選択肢に昇格しています。

2の [kh] は、見たことがなくて焦った受験生の方も多かったのではないかと思います。

[kh] の h は、「有気音」であることを表しています。
「有気音」とは、破裂音・摩擦音・破擦音において、調音器官の開放より少し遅れて母音の声帯振動が始まる子音のことです。
中国語などで見られ、閉鎖の開放後に息の流れる音(破擦音の場合は摩擦音)が聞こえます。

平成29年度(2017年度)試験

【音声的対立】の観点から見て、他と性質が異なるものはどれか?

平成29年度(2017年度)試験だけ、他の年度と毛色が違います。

音声的対立とは、

 [m] 有声両唇鼻音
 [b] 有声両唇破裂音
→ 「調音点」だけが違う。

のように「どこか1か所だけ違って、その他はすべて同じ」ペアのことです。

今回の問題では、他の選択肢とペアの内容が違うものを探します。

1だけ日本語にない音なので、残りを先に見ていきましょう。

2 [ç] と [ɸ]
[ç] 無声硬口蓋摩擦音
[ɸ] 無声両唇摩擦音
→ 「調音点」だけが違う(調音点で音声的に対立している)。

3 [t] と [d]
[t] 無声歯茎破裂音
[d] 有声歯茎破裂音
→ 「声帯振動の有無」だけが違う(声帯振動の有無で音声的に対立している)。

4 [ɕ] と [ʑ]
[ɕ] 無声歯茎硬口蓋摩擦音
[ʑ] 有声歯茎硬口蓋摩擦音
→ 「声帯振動の有無」だけが違う(声帯振動の有無で音声的に対立している)。

5 [p] と [b]
[p] 無声両唇破裂音
[b] 有声両唇破裂音
→ 「声帯振動の有無」だけが違う(声帯振動の有無で音声的に対立している)。

この時点で、2 だけ何で音声的に対立しているかが違うことがわかります。
これが正解です。

ちなみに、残った 1 は
[θ] 無声歯摩擦音
[ð] 有声歯摩擦音
です。
※ [θ]は、令和2年度(2020年度)試験の正答・平成28年度(2016年度)試験の誤答としても登場しています。

平成28年度(2016年度)試験

【調音法】の観点から見て、他と性質が異なるものはどれか?

5だけ日本語にない音なので、残りを先に見ていきましょう。

1 [ɸ] 無声両唇摩擦音
日本語のフ・ファ・フェ・フォ

2 [ç] 無声硬口蓋摩擦音
日本語のヒ・ヒャ・ヒュ・ヒョ

3 [s] 無声歯茎摩擦音
日本語のサ・ス・セ・ソ・スィ

4 [ɾ] 有声歯茎弾き音
日本語のラ・リ・ル・レ・ロ

この時点で、 4 が正解だとわかります。

ちなみに、残った 5 は
[θ] 無声歯摩擦音
です。
※ 令和2年度(2020年度)試験の正答・平成29年度(2016年度)試験の誤答としても登場しています。

平成27年度(2015年度)試験

【唇の丸め】の観点から見て、他と性質が異なるものはどれか?

「唇の丸め」と言えば、[o] の音だ!と思って探したら、選択肢にありませんでした。
そう簡単にはいかないですね…!!

1つだけ見慣れないものがありますが、消去法で解くことができます。
1 [e] 非円唇前舌中母音
2 [ɯ] 非円唇後舌高母音(狭母音)
3 [a] 非円唇低母音(広母音)
5 [i] 非円唇前舌高母音(狭母音)

残った 5 が正解です。

ちなみに [ɔ] は
[ɔ] 半開後舌円唇母音
と呼ばれます。

覚えなくても大丈夫です。

平成26年度(2014年度)試験

【調音点】の観点から見て、他と性質が異なるものはどれか?

平成26年度(2014年度)試験は、日本語の音にあるものだけで選択肢が構成されています。
見ていて安心しますね。

1 [ç] 無声硬口蓋摩擦音
日本語のヒ・ヒャ・ヒュ・ヒョ

2 [t] 無声歯茎破裂音
日本語のタ・テ・ト

3 [ʣ] 無声歯茎破擦音
日本語のザ・ズ・ゼ・ゾ(主に語頭)

4 [ɾ] 有声歯茎弾き音
日本語のラ・リ・ル・レ・ロ

5 [n] 有声歯茎鼻音
日本語のナ・ヌ・ネ・ノ

1 だけ「調音点」が違いますね。
これが正解です。

まとめ

みなさん、いかがでしたか?

音声記号問題が得意になると、実際の試験や過去問演習において、気持ちよくスタートを切ることができます。

知識を定着させて、得意分野にしてしまいましょう!

最後に、各年度の試験Ⅰ 問題1へのリンクを貼っておきます。
ぜひ、他の問題にも取り組んでいってください。
(平成28年度以前は、鋭意作成中です。)

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