【令和4年度 日本語教育能力検定試験 過去問】試験Ⅲ 問題12の解説!

過去問解説

令和4年度 日本語教育能力検定試験の試験問題における

 試験Ⅲ 問題12

の解説です。

お手元に問題用紙をご用意いただき、読み進めていってください。

前の問題はこちら

問1 フィラー

解説 フィラー

「フィラー」とは、会話のつなぎとなったりする「えーと」「あのー」のような表現のことです。

その答えになる理由

各選択肢の前半を見てみましょう。
「短い発話」とある2と3のいずれかが良さそうですね。

フィラーの代表例「えーと」「あのー」のあとに発話するのは、フィラーを発した本人なのです。
会話の進行を助けているわけではないので、3が正解です。

問2 ポライトネス・ストラテジー

まずは、用語の意味を順に確認していきましょう。

解説 ポライトネス理論

「ポライトネス理論」とは、ブラウン&レビンソンが提唱した「ポライトネス」と「フェイス」を鍵概念として、コミュニケーションにおいて人間関係を円滑にするための言語的な工夫・方法を考察する理論のことです。

【令和3年度試験 試験Ⅲ 問題14 問1】
【令和2年度試験 試験Ⅲ 問題14 問2】
【令和元年度試験 試験Ⅲ 問題12 問3】
【平成28年度試験 試験Ⅰ 問題13 問1~5】
でも出題されています。

解説 ポライトネス

「ポライトネス」とは、会話の参加者が心地よくなるようにするなど、人間関係を円滑にするための言語活動のことです。

解説 フェイス

「フェイス」とは、人と人との関わり合いに関する基本的な欲求を指します。
他者に近づきたい・好かれたいという「ポジティブフェイス」と、他者と離れていたい・立ち入られたくないという「ネガティブ・フェイス」に分類されます。

その答えになる理由

相手に近づきたい意図があるのであれば、ポジティブ・フェイスに配慮した「ポジティブ・ポライトネス・ストラテジー」、相手と離れたい意図があるのであれば、ネガティブ・フェイスに配慮した「ネガティブ・ポライトネス・ストラテジー」です。

選択肢を1つずつ見ていきましょう。

1は、ネガティブ・フェイスに配慮した「ネガティブ・ポライトネス・ストラテジー」の例です。
「ポジティブ・ポライトネス・ストラテジー」であれば、「ねえ、手伝ってよ」のような言い方になります。

2は、ポジティブ・フェイスに配慮した「ポジティブ・ポライトネス・ストラテジー」の例です。
聞き手に対して、自分がコーヒー好きだということを知っている前提で話しています。

3は、ネガティブ・フェイスに配慮した「ネガティブ・ポライトネス・ストラテジー」の例です。
「ポジティブ・ポライトネス・ストラテジー」であれば、「ここ、間違ってるよ」のような直接的な言い方になります。

4は、ネガティブ・フェイスに配慮した「ネガティブ・ポライトネス・ストラテジー」の例です。
敬語は相手との距離を取るので、典型的な「ネガティブ・ポライトネス・ストラテジー」だと言えます。

1が正解です。

問3 尊大語

解説 尊大語

「尊大語」とは、「俺様」「崇め奉れ」のように、話し手が自身を上位に置いて尊大な意識のもとに表現するもののことです。

人間関係や場に配慮して選択的に表現する言語行為であるため、待遇表現の一種だと言えます。

その答えになる理由

ハリーポッターシリーズの「マグル(非魔法界の両親のもとに生まれた魔法使いや魔女)」のような相手を侮ったり、ないがしろにする表現は「侮蔑語」と呼ばれます。
1の「見やがって」、2の「あいつ」「~くさってる」、3の「悪がき」は侮蔑語の例ですね。

4の「俺様」「お~」が尊大語の例なので、これが正解です。

問4 コミュニケーション・ストラテジー

まずは、用語から確認していきましょう。

解説 コミュニケーション・ストラテジー

「コミュニケーション・ストラテジー」とは、相手の言ったことがわからなかったとき・自分の言ったことが伝わらなかったときの修復の仕方のことです。

解説 回避

「回避」とは、「コミュニケーション・ストラテジー」の1つで、難しい文法形式を使わずに簡単な言い方をすること等、ある語・用法を避けることです。

解説 言い換え

「言い換え」とは、「コミュニケーション・ストラテジー」の1つで、類似表現を使ったり新しい語を作ったり等、ある語を別の単語で言うことです。

解説 母語使用

「母語使用」とは、「コミュニケーション・ストラテジー」の1つで、目標言語での言いたい語がわからなかった場合に自分の母語を使用することです。

解説 援助要求

「援助要求」とは、「コミュニケーション・ストラテジー」の1つで、再度話してもらったり、ゆっくり話してもらったり言いたいことが伝わったかを教えてもらったりするようにお願いすることです。

その答えになる理由

選択肢を1つずつ見ていきましょう。

1のように、話し手の言っていることが聞き取れなかったときに再度言ってもらうのは「コミュニケーション・ストラテジー」における「援助要求」です。

3のように、自信のない表現を避けるのは「コミュニケーション・ストラテジー」における「回避」です。

4のように、発話が伝わったかを確認するのは「コミュニケーション・ストラテジー」の「援助要求」です。

残った2が正解です。
「文を単語に分割して、自分の中で考える」のではなく、「文を単語に分解して話してもらえるように頼む」であれば、「コミュニケーション・ストラテジー」の「援助要求」に該当します。

問5 語用論的知識の習得

解説 語用論

「語用論」とは、言語表現とそれを用いる使用者や文脈との関係を研究する言語学の一分野のことです。

「寒いですね」は「体感気温が低いこと」について相手に同意を求める内容ですが、窓が開いている部屋の中で発話された場合は「窓を閉めてほしい(閉めても良いか)」という捉え方をすることができます。

このような特定の文脈や状況の中での発話の解釈を扱うのが「語用論」です。

その答えになる理由

「教室環境」とは大学や日本語学校のような教室内で日本語を学ぶ場合、「自然習得環境」とは教室外での社会的な場面で日本語を学ぶ場合を指しています。

語用論の観点だと、「教室環境」よりも「自然習得環境」の方がその場面における表現が正しいかが身に付きやすいですね。

内容は用語を使って複雑そうに書いてありますが、「語用論とは何か?」がわかっていれば、そこまで難しくはありません。

選択肢を1つずつ見ていきましょう。

教室環境は、自然習得環境よりも語用論的な観点が学びにくいです。
そのため、教師が語用論的な肯定証拠(●●な場面だと、○○で合っているよ!)を明示することで、習得は促進されていきます。
1は間違いです。

教室環境は、自然習得環境よりも語用論的な観点が学びにくいです。
そのため、教師が語用論的な否定証拠(●●な場面だと、○○だと間違っているよ!)を明示することで、習得は促進されていきます。
2は間違いです。

自然習得は、教室環境よりも語用論的な観点が学びやすいです。
母語話者が学習者に語用論的な肯定証拠(●●な場面だと、○○で合っているよ!)を提示しない傾向にあることまでは合っていますが、教えてもらう・教えてもらわないであれば、前者の方が習得の促進につながりますね。
3は間違いです。

自然習得環境は、教室環境よりも語用論的な観点が学びやすいです。
母語話者が学習者に語用論的な否定証拠(●●な場面だと、○○だと間違っているよ!)を提示しない傾向にあり、教えてもらう・教えてもらわないであれば、後者だと習得の妨げにつながりますね。
4が正解です。

次の問題はこちら

タイトルとURLをコピーしました