令和5年度 日本語教育能力検定試験の試験問題における
試験Ⅲ 問題15
の解説です。
お手元に、問題冊子をご用意の上でご確認ください。
前の問題はこちら
問1 『日本語の基礎』の理念や方針を受け継いで開発された教科書
その答えになる理由
株式会社スリーエーネットワークが今年(2023年)に50周年を迎えたことによる記念の問題ですね。
長年業界に貢献していると、こういうこともあるのか…!!
参考はこちら
当社は、1973年に主に産業技術研修生のための日本語教科書『日本語の基礎』(財団法人海外技術者研修協会編)を発行する出版社として発足し、お陰様で50年を迎えました。
株式会社スリーエーネットワークHP
会社概要
『標準日本語讀本』が長沼直兄の著書だと知っていれば1つ削れますが、それ以外は時代背景と教科書ができた目的を突合することによる消去法です。
どんな教科書かを知っていれば解けるので、現役日本語教師の方が有利ですね。
選択肢を1つずつ見ていきましょう。
『まるごと 日本のことばと文化』は、国際交流基金による成人学習者向けに開発された日本語のコースブックです。
初版が2013年で、JF日本語教育スタンダードに準拠しています。
JF日本語教育スタンダードは2001年のCEFRの考え方にもとづいて開発されているので、1950年代当時の東南アジアの技術者を研修生として国内に受け入れていた背景とは関係ないですね。
1は間違いです。
『標準日本語讀本』は、長沼直兄による入門から超上級までの全七巻からなる日本語の教科書です。
日本語教育史の中で出てきますね。
初版が1931年なので、1950年代に開発された『日本語の基礎』が理念や方針が引き継がれていることはありえません。
2は間違いです。
『日本語初歩』は、国際交流基金による海外で日本語を学習する人のために作られた初級教科書です。
初版が1985年で、日本では2002年まで出版されていました。
4技能を総合的に学習することを目的とし、それぞれの表現を用いる場面を想定した会話形式に初級の文法・文型がまとめられているのが特徴です。
4技能の総合力が求められているので、1950年代当時の東南アジアの技術者を研修生として国内に受け入れていた背景とは関係ないですね。
3は間違いです。
『みんなの日本語』は、株式会社スリーネットワークによる日本語の教科書です。
初版が1998年なので、1950年代に開発された『日本語の基礎』よりも後ですね。
『日本語の基礎』と同じ出版社であることと消去法により、4が正解です。
問2 「難民」に関して、2020年度時点で文化庁が行っている日本語教育事業
その答えになる理由
出典元はこちら
文化庁HP
- (1)条約難民に対する日本語教育事業
- [1]定住支援施設における日本語教育
- [2]日本語学習教材の提供
- [3]日本語教育相談員による指導・助言
ホーム >政策について >国語施策・日本語教育 >日本語教育 >難民に対する日本語教育
1は、[1]定住支援施設における日本語教育
2は、[2]日本語学習教材の提供
4は、[3]日本語教育相談員による指導・助言
の内容ですね。
記載のない3が正解です。
問3 1990年に実施された「出入国管理及び難民認定法」の改正
その答えになる理由
出入国管理及び難民認定法は昭和26年(1951年)に公布され、時代の流れに合わせて改正されてきました。
各在留資格の内容を問われることが多く、年代に注目した出題は珍しいですね。
在留資格「定住者」が創設されたのは、平成2年(1990年)改正ですね。
1が正解です。
在留資格「高度専門職」が創設されたのは、平成26年(2014年)改正ですね。
2は間違いです。
在留資格「留学」「就学」が統合されたのは、平成21年(2009年)改正ですね。
3は間違いです。
在留資格「技術」「人文知識・国際業務」が統合されたのは、平成26年(2014年)改正ですね。
4は間違いです。
在留資格は頻出分野で、↓のように出題されています。
問4 外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策の主たる目的
その答えになる理由
出典元はこちら
総合的対応策は、外国人材を適正に受け入れ、共生社会の実現を図ることにより、日
外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策
本人と外国人が安心して安全に暮らせる社会の実現に寄与するという目的を達成するた
め、外国人材の受入れ・共生に関して、目指すべき方向性を示すものである。
平成30年12月25日
外国人材の受入れ・共生に関する関係閣僚会議
2の内容がそのままですね。
これが正解です。
問5 「日本語教育の参照枠」を参照することによって期待される効果
その答えになる理由
参考はこちら
・日本語学習者の周囲の人々(家族、友人、職場の人、地域住民等)による日
日本語教育の参照枠 報告
本語学習者の日本語能力の熟達度の把握が可能となり、日本語学習者を支え
る環境が醸成される。
令和3年10月12日
文化審議会国語分科会
P9
のように、1の内容の記載がありますね。
1は適当な内容です。
さらに、社会的存在である言語使用者及び学習者が言語を学ぶ上での目標を具体
日本語教育の参照枠 報告
的に示した「言語能力記述文(Can do)」について説明し、約 500 の Can do を示しま
した。今後、生活、就労、留学などの分野別の言語能力記述文が作成され、追加さ
れていくことが期待されます。
令和3年10月12日
文化審議会国語分科会
はじめに
から、各分野での言語能力記述文が整備されていくことが期待されていますが、教育機関ごとの教育内容・教育方法の統一までは言及されていません。
統一までいくと、さすがに現実的ではないですね…!!
2が不適当な内容です。
また、複数の教育機関や企業等が共通の指標や言語能力記述文を参照することにより、学習者は、転居や転職によって日本語を学ぶ場が変わったとしても、継続的な日本語学習が可能となる。
日本語教育の参照枠 報告
令和3年10月12日
文化審議会国語分科会
P14
のように、3の内容の記載がありますね。
3は適当な内容です。
○ 現在、国内外で実施されている日本語能力の判定試験及び評価は、各試験及
日本語教育の参照枠 報告
び評価の目的に応じて、得点の解釈基準やレベル設定、レベル判定基準等が定
められている。これらの試験及び評価が「日本語教育の参照枠」との対応付け
を行うことにより、試験利用者が日本語能力に関する測定結果を相互に参照で
きる枠組みが構築され、異なる試験・評価間の通用性が高まることが期待され
る。
○ また、共通の指標での日本語能力判定に関する評価が得られることにより、
受験者はどの試験を受験しても、熟達度のレベルについて、個別の試験の独自
性や特質を勘案した上で、測定結果を相互に参照できる枠組みに基づいた教育
的なフィードバックを得ることができる。
令和3年10月12日
文化審議会国語分科会
P90
のように、4の内容の記載がありますね。
4は適当な内容です。