![](https://japanese-language-education.com/wp-content/uploads/2022/01/むきえびlogo-type_余白-1-150x150.png)
令和2年度 日本語教育能力検定試験の試験問題における
試験Ⅲ 問題4
の解説です。
お手元に、問題冊子をご用意の上でご確認ください。
![](https://japanese-language-education.com/wp-content/plugins/pochipp/assets/img/pochipp-logo-t1.png)
![](https://japanese-language-education.com/wp-content/plugins/pochipp/assets/img/pochipp-logo-t1.png)
前の問題はこちら
![](https://japanese-language-education.com/wp-content/uploads/2023/12/5-300x225.png)
![](https://japanese-language-education.com/wp-content/uploads/2023/12/5-300x225.png)
問1 類義の表現の間にも意味の違いがある例
その答えになる理由
![](https://japanese-language-education.com/wp-content/uploads/2023/10/3.png)
![](https://japanese-language-education.com/wp-content/uploads/2023/10/3.png)
選択肢を1つずつ見ていきましょう。
幼稚な人
幼稚な行い
未熟な人
未熟な行い
のように、「幼稚」「未熟」は、いずれも人・行為の評価に用いることができます。
1は、間違いです。
初めて富士山に登ったのは、18歳のときだ。
2回目に富士山に登ったのは、20歳のときだ。
最初に富士山に登ったのは、18歳のときだ。
2回目に富士山に登ったのは、20歳のときだ。
のように、「初めて」「最初に」は、いずれも同一人物内での順番を表しています。
2は、間違いです。
階段をのぼる。
の場合、ヲ格名詞「階段」は、経路を表しています。
一方、
2階にあがる。
の場合、ニ格名詞「2階」は、到達点を表していますね。
それぞれ焦点になるものが違います。
3が正解です。
明日、富士山に登る予定だ。
明日、富士山に登るつもりだ。
は、いずれも自分の計画を表しています。
他者の計画を表す場合は、
明日、富士山に登る予定だそうだ。
明日、富士山に登るつもりだそうだ。
のように、「予定だ」「つもりだ」のいずれであっても、伝聞を表す「そうだ」が必要ですね。
4は、間違いです。
問2 弁別的な意味の違いがなくても、文体・位相・地域の違いがある場合
その答えになる理由
![](https://japanese-language-education.com/wp-content/uploads/2023/10/2.png)
![](https://japanese-language-education.com/wp-content/uploads/2023/10/2.png)
選択肢を1つずつ見ていきましょう。
このままでは、目標達成があやうい。
このままでは、目標達成があぶない。
のように、「あやうい」「あぶない」は文体が違うだけで、方言か共通語かで区別されているわけではありません。
1は、間違いです。
おでこに痣ができた。
ひたいに痣ができた。
のように、「おでこ」の方が「ひたい」よりもくだけた表現ですね。
くだけた表現≒俗語のため、2が正解です。
あした、7時に駅に集合しましょう。
あす、7時に駅に集合しましょう。
のように、「あした」「あす」は文体が違うだけで、女性語か男性語かで区別されているわけではありません。
3は、間違いです。
あったかいスープが飲みたい。
あたたかいスープが飲みたい。
のように、「あったかい」「あたたかい」は文体が違うだけで、幼児語か一般語かで区別されているわけではありません。
4は、間違いです。
問3 「~くせに」と「~のに」の文法上の共通点
その答えになる理由
![](https://japanese-language-education.com/wp-content/uploads/2023/10/4.png)
![](https://japanese-language-education.com/wp-content/uploads/2023/10/4.png)
選択肢を1つずつ見ていきましょう。
内情を知らないくせに、勝手なことを言わないでください。
内情を知らないのに、勝手なことを言わないでください。
いずれも、従属節の主語・主節の主語が「あなた」ですね。
同一の主語が入ることがあるため、1は間違いです。
内情を知っていれば、そんなことは言わないはずだ。
のような用法が状況判断の「はずだ」です。
話し手がその事柄の成立・存在を当然視していることを表す認識のモダリティの1つです。
△ 内情を知らないはずのくせに、勝手なことを言わないでください。
△ 内情を知らないはずなのに、勝手なことを言わないでください。
のように、一見いずれにも「はずだ」を入れられるように見えますが、何だ違和感がありますね。
これは、「のに」「くせに」を用いた逆接節には、従属節に制約があるからです。
年下のくせに、生意気なことを言うな。
年下なのに、生意気なことを言うな。
のように、「のに」「くせに」を用いた従属節が条件となり、主節には、予測される因果関係が成立していないことを表します。
この条件は、成立することが前提です。
そのため、「はずだ」「にちがいない」「可能性がある」のような「事実とは違うかもしれないが、話し手はこう認識している」という曖昧さをもたせるモダリティとは相性が悪いことがわかります。
従属節に状況判断を表す認識のモダリティ「はずだ」を用いることができないため、2は間違いです。
素人のくせに、勝手な判断をするな。
素人なのに、勝手な判断をするな。
のように、「くせに」は「名詞+の+くせに」ですが、「のに」は「名詞+な+のに」ですね。
接続の形がことなるため、3は間違いです。
× 内情を知らないくせに、なぜそんなことを言うですか?
× 内情を知らないのに、なぜそんなことを言うですか?
○ 内情を知らないくせに、なぜそんなことを言うのですか?
○ 内情を知らないのに、なぜそんなことを言うのですか?
のように、問いかけの文では、「くせに」「のに」のいずれも「の(だ)」が必要ですね。
4が正解です。
問4 「~反面…」にはなく「~一方で…」だけが表す意味
解説 「反面」の用法
Aさんは、明るい性格である反面、寂しがり屋でもあります。
Aさんという人がもつ
- 明るい性格である
- 寂しがり屋でもある
という対照的な二面について説明しています。
同じ人・事物について説明するので、
× Aさんは明るい性格である反面、Bさんは寂しがり屋でもあります。
のように、主節・従属節で主語が異なることはありません。
![](https://japanese-language-education.com/wp-content/uploads/2024/05/123-300x225.png)
![](https://japanese-language-education.com/wp-content/uploads/2024/05/123-300x225.png)
解説 「一方で」の用法
【対比の用法】
A支店の売上が好調な一方、B支店の売上は前年割れしている。
A支店の売上が好調な一方で、B支店の売上は前年割れしている。
主節が「B支店の売上は前年割れしている」・従属節が「A支店の売上が好調な一方(で)」です。
2つの事態が同時に成立していることがわかります。
上の例文では、「A支店の売上」「B支店の売上」という2つの対照的な事柄が並んでいますね。
これが対比の用法です。
【逆接の用法】
額面の給与が増える一方、手取りは増えていない。
額面の給与が増える一方で、手取りは増えていない。
主節が「手取りは増えていない」・従属節が「額面の給料が増える一方(で)」です。
2つの事態が同時に成立していることがわかります。
上の例文では、「額面の給与が増えていれば、当然手取りも増えているはずだ!」となるところが、想定とは逆の事態が成立していますね。
これが逆接の用法です。
【累加の用法】
Cさんは日本語教師として活躍している一方、養成講座の講師もしている。
Cさんは日本語教師として活躍している一方で、養成講座の講師もしている。
主節が「養成講座の講師もしている」・従属節が「日本語教師として活躍している一方(で)」です。
2つの事態が同時に成立していることがわかります。
上の例文では、「日本語教師に加えて、養成講座の講師も…」のように情報が付け加えられていますね。
これが累加の用法です。
![](https://japanese-language-education.com/wp-content/uploads/2024/03/65-300x225.png)
![](https://japanese-language-education.com/wp-content/uploads/2024/03/65-300x225.png)
その答えになる理由
![](https://japanese-language-education.com/wp-content/uploads/2023/10/2.png)
![](https://japanese-language-education.com/wp-content/uploads/2023/10/2.png)
選択肢を1つずつ見ていきましょう。
【対比の用法】
○ Aさんは、やさしい反面、優柔不断なところもある。
○ Aさんは、やさしい一方で、優柔不断なところもある。
のように、「反面」「一方で」は、いずれも対比の用法があります。
1は、間違いです。
【累加の用法】
× Aさんは、日中に正社員として働く反面、夜間はアルバイトもしている。
○ Aさんは、日中に正社員として働く一方で、夜間はアルバイトもしている。
のように、「一方で」には累加の用法がありますが、「反面」にはありません。
2は、間違いです。
【対比の用法】
Aさんは、やさしい一方で、優柔不断なところもある。
【逆接の用法】
課長に昇進した一方で、残業代がなくなった分の手取りが減ってしまった。
【累加の用法】
Aさんは、日中に正社員として働く一方で、夜間はアルバイトもしている。
のように、「一方で」の3つの用法のいずれであっても、従属節と主節の事態は同時成立であり、従属節の事態が先行するわけではありません。
そもそも、「一方で」に「継起」を表す用法もないですね。
3は、間違いです。
【逆接の用法】
課長に昇進した一方で、残業代がなくなった分の手取りが減ってしまった。
を「因果関係」として捉えられなくもないですが、主節の事態が予想外のことだとは限りません。
4は、間違いです。
問5 多くの学習者にとって理解しやすい類義の表現に言い換える例
その答えになる理由
![](https://japanese-language-education.com/wp-content/uploads/2023/10/1.png)
![](https://japanese-language-education.com/wp-content/uploads/2023/10/1.png)
これは間違えてもおかしくない問題です。
には、「ても」という逆接条件が含まれています。
これは多くの人が間違える問題です。
と言い換えた方が、シンプルで多くの学習者にとって理解しやすい表現になりますね。
1が正解です。
髪型 → ヘアスタイル
印象 → イメージアップ
のように、外来語を増やすことは、特に漢字圏の学習者にとって混乱する原因になりやすいですね。
2は、間違いです。
いがみ合う → 犬猿の仲
のように、慣用表現に言い換えることにより、+αで語の意味を覚える必要がでてきてしまいますね。
3は、間違いです。
非常に → それはもう
のように、口語表現に言い換えることにより、+αで語の意味を覚える必要がでてきてしまいますね。
4は、間違いです。
次の問題はこちら
![](https://japanese-language-education.com/wp-content/uploads/2023/12/5-300x225.png)
![](https://japanese-language-education.com/wp-content/uploads/2023/12/5-300x225.png)
過去問解説の一覧はこちら
![](https://japanese-language-education.com/wp-content/uploads/2023/12/過去問解説-300x225.png)
![](https://japanese-language-education.com/wp-content/uploads/2023/12/過去問解説-300x225.png)